YU-A『ごめんね、ママ』オフィシャルインタビュー


全国5ヵ所で行われたツアー
『YU-A 2 Girls Live Tour PERFORMANCE 2011』を経て改めて自分と向き合い、溢れ出てきたもの――
それは、今まで言葉にすることのなかった母親へ対する素直な気持ち。
YU-Aから届けられた等身大のメッセージ・ソング「ごめんね、ママ」。これまで語られることのなかった真実(リアル)とは。

●なぜこのタイミングで母親の歌を歌おうと思ったのですか?

YU-A:以前からお母さんへ対する感謝の曲を作ろう、という話はあったんですけど、私自身が「いま書いても歌えないと思う」と言って断っていたんです。
その曲を私が歌うときは、自分が掲げた目標を達成してから、と思っていたんですが、今のような夢に向かっている途中だからこそ、完璧じゃないけど今のYU-Aにしか歌えないものがあるんじゃないか、ってスタッフに言われたことで、書ける自信がついてきたんです。でも、一言で「お母さんの曲」といっても、私とお母さんには25年分のエピソードがあるわけで、一曲にするイメージがなかなか沸かなくって。
漠然とはイメージできているけど、どこを切り取ればいいのか……不安ばかりでいつもより時間はかかりましたけど、私がお母さんに対して感じてきたことや伝えたいことを、リスナーのみなさんにも共感してもらえるような歌詞にしました。そうしないと私とお母さんの誰も共感できないリアルすぎる歌詞ばかりになってしまったと思うので(笑)。

●いま現在のお母さんとの関係性というのは?

YU-A:すごく仲良しだと思います。距離も近いけど……普段から今回の歌詞にあるような会話はまったくしませんね(笑)。
大概、母親は私に対してダメ出しばかりをするので、基本、昔から褒められて伸びる育てられ方をしていないんです。なので私の人との接し方もどちらかというと褒めながら自分の意思を伝えるのではなく、自虐的に接しながら伝えていくというか……それはいまだに私自身の悩みではあるんです(笑)。今回、ミュージックビデオにお母さんにも出演してもらっているんですけど、撮影前日に曲を聴いてもらったんです。
……それまでは恥ずかしいというか、あまり聴かせたくなかったんですよね。聴いてもらった感想は「宝物にするね」って言われて、正直意外でした。昔からそういう関係性ではあったけど、私も25歳になったし、いまの関係性だからこそ、素直に伝えてくれたのかな、って思っています。
これがデビューしてからすぐ、とかだったら、きっと素直な言葉が出ていなかったんじゃないかな。
親と子供って、不思議な感覚がありますよね。言葉を発さずにも感覚でわかるくらい近い存在なのに、親と子だからこそぶっちゃけたくない部分もある。逆にそういう気持ちは、友達や恋人には話すことができます。

●これまでにYU-Aが母子家庭で育ったということは公にされていなかったことだと思いますが、そのことに関して話を聞かせてください。

YU-A:私は生まれたときから父親がいませんでした。いまだに会ったことも見たこともありません。
私が小さい頃の“離婚"と、いまの“離婚"に対する理解は全然違うものだったと思うんです。ヘンな言い方ですけど、昔よりいまの方が離婚に対してラフな感覚というか、両親が仲の悪い環境で育つくらいなら、愛情をたくさんもらって片親で育った方がいいから。
中学に進学したときには、周囲にも離婚をする家庭が出てきたりもして、コンプレックスは感じていたけど、以前よりはネガティブにもならず父親がいないことを隠すこともしなくなりました。片親で育った子は、周囲が思う以上に気にしていなかったりするんです。
ただ、そうじゃない人が気を遣うというか……私は全然、片親だったことを恥じていないし、むしろお母さんありがとう、と思っていなかったら、「ごめんね、ママ」は書けなかったと思います。

●反抗期もあったと思いますが、YU-Aの場合はどんな反抗期だったのですか?

YU-A :「CHANGE」(6th sigle)でも歌っていたことですけど、小さな頃から大人へ対する不信感を持っていたんです。
言葉の裏が読めるというか、子供だましが嫌いだった。「お化けが出るから寝なさい」とか、大人はいいのになぜ子供はダメなの? って、それでケンカの絶えない家庭でした。
私はひとりっ子だったので、兄弟がいれば愚痴を共有することもできたと思うんですけど、私の味方をしてくれる大人がいなかったので、私 vs. 大人という環境が反発心を強くしたんだと思います。
なので、お母さんとは常にケンカしていたし……それでこういう子になりました(笑)。
とにかく厳しい家庭だったので、抑圧されていた分、爆発も大きい。家出はしょっちゅうで、小中高すべて経験しました。
小学校の初めての家出のときは捜索願が出されてパトカーが出動するくらいでした。お母さんとは顔を合わせればケンカばかりしていたし……歌詞にもありますが、「後ろ指を指されないよう厳しくしてくれた」って、いまは素直に思えるんですけど、小さい頃はそれが理不尽だとしか思えませんでしたからね。

●上京するときはお母さん、心配されたんじゃないですか?

YU-A:それが、高校卒業後からだいぶ変わったんです。義務教育課程を終えて、学生生活も終われば責任は自分に返ってくるじゃないですか。
途端に何も言わなくなったんですよね。門限もなくなり、高校卒業から上京するまでは自分の好きなことに没頭してました。歌もそうだけど、ダンスにも打ち込んだり……当時は上京することも「友達と一緒に暮らして、バイトして稼げばどうにかなるんじゃん?」みたいな甘い考えで、お母さんは怒るどころか半分あきらめモードに入ってました。
これまでずっと叱ってきてたのに、なぜかそういうテンションでこられると私自身も強気になれなかった。
それでしっかり今後を考え、好き放題してきてしまったことを反省しつつ、それからは自然とお母さんに対する嫌悪感も薄れていきました。そしてお母さんとの仲も修復していった頃、オーディションに合格して上京することになったんです。そのときは「がんばってきなさいよ」って、私を信じてくれている感じが伝わってきました。私が本当に歌が大好きで、根は真面目ということも知ってるから、余計な心配もしていなかったし、たとえ悪いことをしたとしても、周りにいる人たちを困らせることまではしない、って私はもちろん、お母さんもわかっていたと思うので。

●いまはお母さんと良き関係性を築けているけど、今回のシングルのタイトルが「ありがとう、ママ」ではなく、「ごめんね、ママ」になった背景、いわゆる直球に「ありがとう」ではなく「ごめんね」という言葉にはしたことにYU-Aらしさを感じました。

YU-A:「ごめんね」という言葉の裏にある「ありがとう」という気持ち。「ありがとう、ママ」だとのどごしが良すぎるというか、「ごめんね」の方が私の素直な気持ちだし、私っぽいタイトルだな、って思ったんです。


●PVを拝見しましたが、冒頭から泣いちゃってますね。

YU-A:自分で疑うほど「泣くの早くない?」って思っちゃいました(笑)。
最後のサビで感極まって泣いちゃうかな、とは思っていたんですけど、撮影が始まったらまさかの出だしから泣いちゃって……。


●逆にお母さんは気丈に振る舞っていましたね。

YU-A:娘である私が泣いていても、自分は泣かないようにしたんだと思います(笑)。
その泣かない強さ、というのも母親の強さだと感じました。


●そんなお母さんを「世界で一番尊敬してる」と歌っていますが、どんなところを尊敬していますか?

YU-A:先日、石垣島の養護施設を訪れて感じたことなんですが、親と子供の関係性は家庭によってバラバラだと思うんです。親は自分の子をみんなかわいいと思うはずなのに、育児を放棄する親もいる。
でも子供にとって親は親であって、その人から生んでもらえたことに、たとえ目の前に両親がいなくても、どんな状況であっても、感謝する日が訪れる。
私自身、当時は感じていなかったけど、母親にとってのいままでの環境は、良い環境だったと言えるものではなかったと思うんです。
イヤになって投げ出すことだってできたのに、しっかり育ててもらえました。過去に2週間家出していたときに叱ってくれたことも、それは愛情だったと思うんです。
その愛情に子供がきちんと向き合えているか否かで、人は変わってしまう。私も向き合わずに育ってきていたら、私はここにいません。
家出をしていた時代に、母以外の誰かにも迷惑をかけていたかもしれない。
常にお母さんの存在があったから最後には素直でいられたというか……私を一番に考えてくれていたんだな、って思うんです。お母さんが興味を抱いたことは、私も興味を抱いた。そして、それが私の趣味になる。私の感性は、ママが見せてきてくれた景色なんです。
連れて行ってもらった場所、経験させてくれたもの、きっと他の同級生では経験できなかったこともたくさんある。
マイケル・ジャクソンとプリンスのビデオがなかったら、もしかしたら私は歌を歌うことに興味を抱かなかったのかもしれないし。
お母さんのことは心から尊敬、そして感謝しています。


●そんなお母さんと似ているところはどんなところですか?

YU-A:感覚がすごい似てるんです。例えば……悪い部分では“粗探し"をするところが似てるんですよね(笑)。
常に同じことを考えてる、っていう感覚が伝わってくる。なので、似たくないのに受け継いでしまっている部分もあります。 「ママがそうだから私もこうなっちゃったんだよ!」って言うと、「そうだよねー、ママもそう思う」って、いまはもう開き直ってますけどね(笑)。


●最後にリスナーへメッセージをお願いします。

YU-A:ブログにも書いたことなんですが、いつか子供は親から生んでもらえたことに感謝する日が、どんな状況であれやってきます。好きな人と巡り会えたとき、好きな仕事を続けられているとき……そんなときにプレゼントしてほしいです。「ごめんね、ママ」のCDをプレゼントする、というわけではなく、気持ちを伝えるだけでいい。
気持ちを伝えるプレゼントをしてほしいです。子供がそう思っているだけでも親にとっては十分なプレゼントだと思うけど、気持ちを言葉にしてプレゼントすることで、きっと親はもっともっとうれしいと思うんです。


●カップリングの「TELL ME TELL ME」について教えてください。

YU-A:「ごめんね、ママ」がメッセージ・ソングなので、カップリングはさらっと聴ける曲を作りたかったんです。
「夜明けが来るまで」や「見守っていたい」は、恋愛の曲とも取れるけど、私としては大きな愛、普遍的なテーマをもとに作った曲だったんですね。
私の変化なのか、最近はそういう歌詞が多くなってきていたので、「TELL ME TELL ME」は、あえて恋愛ソング、しかもベタな恋愛ソングでいこうと思って作った曲です。


●コンセプトは「ひと夏の恋」?

YU-A:「夏が始まると同時に恋も始まり、夏とともにその恋も終わる」をテーマに歌詞を書きました。ちょっと浮かれた女子というか、ふわふわした女子を、ちょっとブリッコでかわいい曲にしたくて、思わず歌っている最中にジェスチャーをしてしまいたくなるような(笑)。


●実際にこういう恋愛はYU-Aはしなさそうですが、あえてキャラクターになりきって書いている、ということですよね。

YU-A:うん(笑)。私はしないけど、そういった恋愛を私は否定はしません。
年齢も若くて傷も深くならない、みんながみんな結婚を前提にお付き合いするわけじゃないし、一瞬だけでも好きになったのなら、人生経験としてこういった恋愛もいいと思うんです。


●でも、イメージとしてはこういった経験もしてそう、みたいな。

YU-A:確かにリスナーのみんなは気づいていないかもですね(笑)。
実体験ではなく、あくまで役を演じきるというか……それも私の個性なんですけどね。
“YU-A"という人間を曲で知ってほしくて、『2 Girls』を出したんですけど、複雑すぎてまだ伝わってないのかもしれませんね(笑)。